リビングに飾られた35本のバラの花。今日は花瓶に移しました。35本のが一つの花瓶の中の水を吸っています。それを見るだけで、また、涙がこぼれ
そうになります。どのバラも上を向いています。それが、巣立っていった子どもたちが未来に向かって歩んでいく姿に見えてしまいます。
今日は昨日のホームルームで読んだ手紙をご紹介させていただきます。
これは、最後のホームルームで読んだ生徒への手紙です。
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2008年3月1日。今日は卒業の日ですね。この教室で、みんなの前で話をするの、これが最後になりますね。そう考えただけで、胸の中がぎゅっと締めつけられそうです。これが最後の話になるのだから、自分も真剣に語ります。どうか、心に刻んでください。
このクラスの多くのメンバーに
初めて出会ったのは、今から2年ほど前の、2006年4月のことでした。知らない子がほとんどで、初めのうちは正直、とまどいました。これからどんな毎日
になるのか、とても不安でした。きっと、みんなも、初めの頃、どんな先生なのか、不安に思っていたことでしょう。しかし、1ヶ月も過ぎた頃には、リアク
ションが多く、個性豊かでとても「明るい」クラスになっていました。話を真剣に聞いてくれて、受け止めてくれる。たくさんのリアクションの中で、みんなを
笑わせながら、されど、真剣勝負で授業ができたこと、とても嬉しく思っています。文化祭では教育実習生と一緒になって、時間と手間をかけて成功に導いた
「○○Qハイランド」。○○に手話の振り付けを習い、ステージで発表した『モノクロ』のパフォーマンス。みんなで何度も話し合って決めた、オリジナリ
ティー溢れる修学旅行。
3
年生になり、○○と○○が加わり35名となった3年○組。ここから、本格的な受験準備が始まりました。一人ひとりが将来のことを真剣に考え、努力してきた
日々。放課後残り、自主的に学習したり、不明な点は教科の先生のところに行き、分かるまで教えてもらったり。受験直前を迎え、みんなで励まし合って努力し
てきた日々。みんな本当によく頑張りました。
学
生時代に「理想の教師像」というテーマでレポートをまとめたことがあるのですが、理想論になるはずのレポートが、現実のものになっていることを実感し、こ
れ以上ないくらいの「幸せ」を感じる日々でした。私はみんなに支えられながら、充実した日々を送ることができました。あなたたちに出逢えて本当に良かっ
た。ありがとう。人との出会いが、こんなにも素晴らしいものだということを実感させてくれたのは、そして私自身を大きく成長させてくれたのは、まさしく、
あなたたちなのです。
人は人の影響を受けて成長していくものです。どうか、これからも人との関わり、人との出会いを大切にしていってください。これまで出会った人々との絆を大切にするとともに、これから出会う人々との絆も構築していってください。
と
ころで、人生は良いことばかりではありません。いやなこと、辛いこと、苦しいこと、それが全体の70%くらいを占めているのではないでしょうか。いやなこ
と、辛いこと、苦しいことに出くわしたとき、どうか、みんな、空を眺めてみてください。この空は私たちと繋がっています。みんなの友だちとも繋がっていま
す。大切な人たちと繋がっています。空を眺めながら、高校で過ごした日々、思い出してみてください。きっと、未来へのヒントが隠されているはずだから。同
じ空の下で、それぞれ、頑張っていこうよ。
そ
れから最後に宿題を出させてください。それは「親への感謝、家族への感謝の気持ちを忘れないこと」です。この年頃だから、親への反発があるかもしれませ
ん。親の意見を素直に受け入れることができないことでしょう。自分もそうでした。恥ずかしながら、自分に子どもが生まれて初めて、「親はどれだけ子どもの
ことを心配しているか」が分かってきました。自分の力で生活できるようになってからでも良いから、たくさん親孝行、家族孝行してください。それが、18年
間育ててもらい、高校卒業の日を迎えられたことに対する恩返しになるから。絶対、忘れないで!まだまだ、語りたいことがあるけど、そろそろまとめます。
卒
業、おめでとう!人との出会い大切にし、豊かな人生を歩みなよ!辛くなったら空を眺めろよ!空はみんなと繋がってるから。同じ空の下で、みんな懸命に生き
てるんだから。たくさん親孝行、家族孝行しろよ!俺のことも忘れんなよ!俺は、大好きなみんなのこと、絶対忘れないから!今まで本当にありがとう!卒業お
めでとう!じゃあ、また会おうぜ!
――2008年3月1日 午前5時20分 旅立ちの朝に――
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これは、最後のホームルームで保護者の皆様に読んだ手紙です。
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本日は保護者の皆様にとりましても、卒業式ですね。まだまだ心配事が絶えないかとは思いますが、大学や専門学校に通うようになりますと、半ば「社会人」となり、いよいよ皆様方のもとから精神的に巣立っていくことと思います。
小学校・中学校・高校という枠組みの中での「学校生活」を卒業し、自分で学びの分野を選択し、自主的に勉学を究め、責任ある行動をとることが求められるようになります。そのような意味から、皆様方におかれましても、本日は、「卒業式」になるかと思うのです。
覚
えていますか?この子たちを授かったことが分かったあの日の喜びを。覚えていますか?初めて抱いたこの子たちの温もりを。覚えていますか?夜泣きがひどく
て、なかなか眠らなかったあの夜のことを。覚えていますか?夜中に高熱を出し、急いで夜間外来に連れて行ったあの夜のことを。覚えていますか?小学校の入
学の時、子供用のスーツやワンピースを着たこの子たちと一緒に小学校の門をくぐったあの日のことを。覚えていますか?反抗期の時に、お互いが険悪なムード
になったあの時期を・・・。
振
り返ってみますと、皆様方それぞれに、忘れられない場面や感慨があることと思います。18年間もの長い時間の中での「子育て」、本当にお疲れ様でした。私
は皆様方のことを、3歳になる娘の父親として、心から尊敬しています。この教室にいる誰もが思いやりのある子たちです。しっかりとした意志があり、地道に
努力できる子たちです。おごり高ぶることなく、謙虚に自分の力や資質を理解し、行動できる子たちです。
過
大評価だと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。無理もありません。子どもたちはまだ、親への「甘え」や「照れ」のようなものがある成長過程にあり
ますから、親に対しては「子どものまま」の振る舞いをしているかもしれません。しかし、担任である私の前はもちろん、学校生活全体において、きちんとした
社会的な振る舞いができる子たちです。自信をもって社会におくり出すことができる子たちです。私を気遣ってくれもします。「いつも、ありがとうございま
す」「忙しいところ、すみません」「今、お時間、大丈夫ですか」。ちゃんと相手の立場に立って行動できます。これらは、18年間かけて、注がれた皆様方の
「愛情」に裏打ちされたものであると確信しています。
ま
た、私との二者面談の中では、皆様方に対する感謝の気持ちを示してくる子も実に多かったのです。このことも覚えておいていただきたいと思います。「親に迷
惑をかけたくない」「親も心配してくれている」「親が○○だと言ってくれたんです」など。そのような場面に出くわすたびに、「私も皆様方のような親になっ
ていきたい」という思いを強くました。
私
はもしかすると、いささか、「おいしい存在」なのかもしれません。「愛情」に裏打ちされたこの子たちのきちんとした行動を一番先に、一番近くで見られたの
ですから。皆様方がそれを実感できるのは、この子たちの親に対する「甘え」や「照れ」が完全に消える頃でしょうから、もう少し時間がかかるかもしれませ
ん。
さて、担任として、一生懸命に取り組んで参りましたが、至らないところがたくさんあったはずです。どうぞ、お許しください。そのような中で、本校の教育活動に対しまして、ご理解とご協力を賜り、ありがとうございました。
最後に、心から言わせてください。
こんなにもいい子たちに巡り合わせてくださり、本当にありがとうございました。
いつも見てくださり、ありがとうございます。
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