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2011年3月 8日 (火)

卒業式後のホームルームで語ったこと

卒業式のホームルームでは学級通信に書いたメッセージを読ませていただきました。

保護者の皆様へ 

 本日は保護者の皆様にとりましても、卒業式ですね。お子様のこと、まだまだ心配が絶えないかとは思いますが、高校を卒業するこれからは、半ば「社会人」となり、いよいよ皆様のもとから精神的に巣立っていくことと思います。
小学校・中学校・高校という枠組みの中での「学校生活」を卒業し、自分で学びの分野を選択し、自主的に勉学を究め、責任ある行動が求められるようになります。そのような意味から、皆様におかれましても、本日は、「卒業式」になるかと思うのです。
立 派に成長し、高校卒業の時を迎えたお子様の立派な姿をご覧になり、いかが思われますか?覚えていますか?この子たちを授かったことが分かったあの日の喜び を。覚えていますか?初めて抱いたこの子たちの温もりを。覚えていますか?夜泣きがひどくて、なかなか眠らなかったあの夜のことを。覚えていますか?高熱 を出し、心配しながら病院に連れて行ったあの日のことを。覚えていますか?予防接種を受けるのを恐がり泣いていたあの日のことを。覚えていますか?歯茎か ら永久歯が顔を出したのに気づいたあの朝のことを。覚えていますか?初めて背負ったランドセルが大きく感じ、「大丈夫なのか?」と気がかりになったあの日 のことを。
私にはこの春、幼稚園を卒園し、小学校に入学する娘がいます。娘と共に歩んできた6年半の日々。その中には、実に様々なシーンがありま す。中でも、この3年間で味わったシーン、そのたびごとに、「1組のみんなと保護者の皆様の間にもこのようなシーンがあったんだろうな。そのとき、保護者 の皆様は、どんな思いになったのだろう」と思いを巡らしてきたものです。
振り返ってみますと、皆様それぞれに、忘れられないシーンや感慨があるこ とと思います。18年間もの長い年月の中での子育て、本当にお疲れ様でした。私は皆様のことを、6歳になる娘の父親として、心から尊敬します。この教室に いる誰もが思いやりのある子たちです。周囲の人々の気持ちを考えて行動できる子たちです。しっかりとした意志があり、地道に努力できる子たちです。おごり 高ぶることなく、謙虚に自分の力や資質を理解し、行動できる子たちです。
過大評価だと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。無理もありませ ん。子どもたちはまだ、親への「甘え」や「照れ」のようなものがある成長過程にありますから、特に、親に対しては「子どものまま」の振る舞いをしているか もしれません。我が儘なことを言ったり、ろくに返事をしなかったりという場合もあるかと思います。それは、親である皆様にだけしかできない「甘え」なのだ と思います。
お子様は立派に成長してきました。担任である私の前ではもちろん、学校生活全体において、きちんとした社会的な振る舞いができる子た ちです。自信をもって社会に送り出すことができる子たちです。私を気遣ってくれもします。「いつも、ありがとうございます」「忙しいところ、すみません」 「今、お時間、大丈夫ですか」。ちゃんと相手の立場に立って行動できます。これらは、18年間かけて注がれた皆様の「愛情」に裏打ちされたものであると確 信しています。
また、私との二者面談の中では、皆様に対する感謝の気持ちを示してくる子も実に多かったのです。このことも覚えておいていただきた いと思います。「親に迷惑をかけたくない」「親も心配してくれている」「親が○○だと言ってくれたんです」など。そのような場面に出くわすたびに、「私も 皆様のような親になりたい」という思いを強くました。
私は、もしかすると、相当幸せな存在なのかもしれません。「愛情」に裏打ちされたこの子たち のきちんとした行動を一番先に、しかも、一番近くで見られたのですから。皆様がそれを実感できるのは、この子たちの親に対する「甘え」や「照れ」が完全に 消える頃でしょうから、もう少し時間がかかるかもしれません。
さて、担任として、一生懸命に取り組んで参りましたが、至らないところがたくさん あったはずです。どうぞ、おゆるしください。そのような中でも、本校の教育活動に対しまして、ご理解とご協力を賜り、ありがとうございました。そして、こ んなにも素敵な子たちに巡り合わせてくださり、本当にありがとうございました。

私の大切な教え子たちへ 

 2011年3月1日。今日は卒業の日ですね。この教室で、みんなの前で話をするの、これが最後になりますね。学校があって教室がある。教室には生 徒のみんながいて、担任の私がいる。生徒のみんなは、毎朝、教室のドアを開け入ってくる私の表情を確認する。そして今日1日がどんな1日になるのか予想す る。そして、同じ空間、同じ時間を共有する。何でもない毎日、当たり前に過ごしてきた毎日が、今では手の届かないところに遠のいてしまった宝物のように感 じます。今、こうして同じ空間と時間を共有していますが、これが最後なんですよね。そう考えただけで、胸の中がぎゅっと締めつけられそうです。これが最後 の話になるのだから、私は真剣に語りたいと思います。どうか、心に刻んでください。
 リアクションが多く、個性豊かでとても明るいクラス。話を真 剣に聞いてくれて、受け止めてくれる。たくさんのリアクションの中で、みんなを笑わせながら、されど、真剣勝負で授業ができたこと、とても嬉しく思ってい ます。そして、みんなの青春時代の貴重な3年間を傍らで応援させていただけたこと、感謝しています。
 「みんなが、私と出会えたことは本当に良かったことなのか。私で良かったのか…」。
  3年間の日々の中で何度も自分に問いかけてきたフレーズです。私が新人の担任だった頃、学園祭が終わった後、クラスのみんなと馬鹿騒ぎをして、上司にこっ ぴどく怒られたことがありました。学校に焼きいも屋の車を呼んで、これまた怒られたことがありました。みんなと、新人時代の私が出会っていたら、どうなっ ていただろう。「出会ってみたかった」という思いがあります。
 同時に、私が50代後半になったときに出会ってもみたかったと思います。この頃に なれば、人生の中で様々なことを経験し、その教訓をたくさんみんなに語ることができたかもしれません。ことばにも深みが出ていたはずですし、すぐに熱くな らずに諭すようなアドバイスができたはずですから。
 しかし、それらは反実仮想の世界です。現実は、30代前半の私とみんなが運命的にこの学校で出会ったということ。半人前の私の姿やことばから、一つでも二つでも、何でも良いのでつかみ取ってくれたのなら幸いです。
 先日読んだ本にこんなことが書かれていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小才は縁に出会って縁に気づかず、
中才は縁に気づいて縁を生かさず、
大才は袖すり会うた縁をも生かす   (柳生石舟齋)
  世の中には縁があるにもかかわらず縁を生かせない人、縁に気づかない人がたくさんいる一方で、わずかな縁を生かせる人もいる、という意味です。出会いは人 の人生を変えます。人の歓びで最もすばらしいのは、よい人とのご縁ではないか、私はそう思っています。よい縁はさらによい縁生み出します。よい縁をつくる ためには、和み、謙虚さと感謝の気持ちが大切です。縁を大事に思う気持ちが、縁となり、つながっていくのですから。
『空の上で本当にあった心温まる物語』より 
三枝枝里子 著 
あさ出版(2010年10月発行)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 人は人の影響を受けて成長していくものです。どうか、これからも人との関わり、人との出会いを大切にしていってください。これまで出会った人々との絆を大切にするとともに、これから出会う人々との絆も構築していってください。
ところで、人生は良いことばかりではありません。いやなこと、辛いこと、苦しいこと、それが全体の多くを占めているのではないでしょうか。いやなこと、辛いこと、苦しいことに出くわしたとき、何かに躓いたとき、どうか、空を眺めてみてください。
この空は繋がっています。
この学校で出会った友だちと繋がっています。
大切な人たちと繋がっています。
そして、私たちとも繋がっています。
空を眺めながら、この高校で過ごした日々、思い出してみてください。きっと、未来へのヒントが隠されているはずですから。同じ空の下で、それぞれ、頑張っていきましょう。
そ れから最後に宿題です。それは「親への感謝、家族への感謝の気持ちを忘れないこと」です。この年頃だから、親への反発があるかもしれません。親の意見を素 直に受け入れることができないこともあるでしょう。私もそうでした。恥ずかしながら、子どもが生まれ、成長を見ていく中で、やっと、「親はどれだけ子ども のことを心配しているか」が分かってきました。自分の力で生活できるようになってからで良いですから、たくさん親孝行、家族孝行してください。それが、 18年間育ててもらい、高校卒業の日を迎えられたことに対する恩返しになりますから。絶対、忘れないでください。
まだまだ、語りたいことがありますが、そろそろまとめます。
卒業、おめでとう!
人との出会い大切にし、豊かな人生を歩んでください!
辛くなったら空を眺めてください!空はみんなと繋がっていますから。
同じ空の下で、みんな懸命に生きているのですから。
私は、毎朝空を見て、「今日も1日、みんなが素敵な1日を過ごせますように」と願い続けていきます!
たくさん親孝行、家族孝行してください!
私のことも忘れないで!
私は、大好きなみんなこと、絶対忘れないから!
今まで本当にありがとう!
卒業おめでとう!
じゃあ、また会いましょう!
さようなら!
――2011年3月1日 卒業の朝に―― 

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